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痛いけど笑う 

自分で言うのもなんだが、私は女子力というものが皆無に等しい。子どもの頃から、「女であること」の面倒くささや不便を感じることのほうが多かった。特に3歳からほとんど変わらない自分の顔が全然好きじゃない。だから自分の顔を鏡でまじまじ見るなんてこともほとんどない。外でトイレに入ったときや、ヨガのスタジオでシャワーのあと鏡の前を長時間占拠する女子たちを見ては、その「努力」に感心する。あるいはよっぽど自分ラヴなのか。
工業高校出身の私は、学校単位で高校3年生の女子に施される化粧品メーカーによる化粧の講習会に呼んでもらえなかった。と言うより、そんなステキな催しの存在すら知らなかった。中学校の同級生がみな同じ口紅とアイシャドウのセットを持っているのを不思議に思って訊いてみると、それは講習会でメーカーが未来のユーザーに配ったものであった。
一応化粧していた頃もあるが、口紅がどうしても苦手だったり季節の変わり目には決まってヘルペスが出たり突然かぶれたり。そもそも化粧品売り場が苦手。BAの声とおべっかが苦手。そんなわけで、だんだん化粧と縁遠くなり、今はまったくのスッピンを世間様にさらしている。白髪を染めるのも5年前止めた。週2のペースでヨガに通うようになってから、それまでも充分短かった髪を更に短くしている。自然派と言えば聞こえはいいが、要はものぐさである。

先日、顔にできてから推定10数年経つホクロを取った。
左の目尻のちょっと外側にあったんだが、なんで「推定」かってーと、正直なところいつできたのか自分でもわからないからだ。写真にうつるのも嫌いなので証拠もない。恥ずかしながら「気づいたら、あった。」てのがほんとうのところ。自分でも呆れる。
ただ、「そんなところにホクロなんてあった?」と訊いてくれる人がたまにいるので、それほど歴史としては長くないようだ。しかし、あるとき急に大きくなって膨らんできたので、一度皮膚科で訊いてみた。すると、悪いものではないと思うが、気になるようなら切除できるとのこと。電気メスだととったあと若干縫うことになって痕が残るから、窒素ガスで冷却して切り取るのが一番だろうと…言われたのが、すでに10年ほど前になる。場所も微妙だし、電気メスだの冷却だの、なんとなく尻込みしていた。
そのうち、実家に行く度に母が、「皮膚科に行きな」と言う。母の妹(私の叔母)が、頬のシミをレーザーで消したのだが、その皮膚科が「たいした良かった」らしいのだ。直接訊いてみたら、いわゆるフツーの皮膚科で、美容形成とか美容皮膚科じゃないから値段も安いし、色気も飾り気もないけど腕は確かだという話。
相方にも、「そのうちキミじゃなくてホクロが返事するようになるかもよ」なんて言われるし(しどい)、さすがに自分でも「むぅぅぅー」と思い始めて、遂に、件の病院に行ってみた。

ウチから車で30分ほど。
内科と皮膚科と泌尿器科と透析外来、という不思議な取り合わせの診療科目。病院のつくりは古く、私の前に何人かいた患者は明らかに全員後期高齢者。受付と、そのすぐ前にある長椅子が2列の待ち合いは、そこでの会話はおろか、少し離れた診察室の会話まで聞こえてくる、プライバシー完全無視。
…叔母ちゃん、ホントにだいじょぶ?

待つこと30分あまり、呼ばれて行くと、そこにいたのは「えーーーーーーっ」と思うほどの、失礼ながらどこからどう見ても立派な婆さんで、それが昔ながらの白い制服(ピンクとかブルーでない)を着ている。それが、「ここで待っててください」としわがれ声で言うのである。看護婦姿の婆さん…コレは新手のプレイの一種?はっきり言ってこのシチュエーションは、志村けんが婆さんの看護婦に扮していろいろやらかす、まさにアレだ。
診察室に入ると、この病院の創設者にして理事長とかいう医者がいた。マスクで顔半分隠れてるが、肌が白くてシミひとつなくてめちゃキレイ。爺さんだけど。で、「今日はどうしたの」と訊くので、ホクロと、ほかに頬のあたりに赤いポチポチができているのも気になっている、と言った。以前違う皮膚科で見てもらったら「老人性のイボ」だと言われた、と言うと間髪入れずに「これはイボじゃないよ、ニキビの変形したやつね」と言って、「これはいろいろ塗ってもダメだから、レーザーでね、やるのがいいよ、ホクロとね、このポチポチ3つね、うん。今日すぐできるからね」と言いながら、やおらiPadを人に向けた。レンズを見て「はあ、お願いします」とポカンとしていると、「ハイ、もっとあっち向いて」と、ホクロ大写しの写真を撮った。そして、引き出しを開けると、そこから5センチ角ぐらいの「顔のスタンプ」を出してカルテに押すと、そこにホクロとポチポチを書き入れた。なんか、レントゲン画像なんかはパソコンで見てるようだが(前の患者の背骨の画像がそのままになっていた)、カルテにスタンプ…もちろんすべて手書き。面白すぎる。ついでに、さっき他人の背骨のレントゲン写真を見た画面がスクリーンセーバーになったんだが、ウィンドウズXPの文字が…やはりここだけ、時間の流れが違う。
中には看護婦が3名いて、幸い私の世話をしてくれたのは婆さんでなく、ピンクの制服を着た大柄な若い人だった。ところが、診察台に乗ってからややしばらく放置。やっと先生が来たと思ったら、心の準備もなにもなく「ハイ、チクッとね、チクッと」と言いながら、いきなりこめかみのあたりにに針を刺した。
痛ーい。めっちゃ痛い。
私は注射されるときの常として、手の甲に爪をギリギリ立てて痛みと恐怖をやり過ごすのだが、そんなの全然効かない。手のひらに汗をかいてきた。ぐぬぬぬぬ。
するとはじめの一撃が早くも効いて、そのあとはなにも感じなくなった。やれやれ。
ところが。

先生が「なんだコレ、電源入んないじゃない」と言っている。私は「レーザーよけ」のために目にテープを貼られているので、見えないが、ホクロの周囲2センチを除いた感覚は全部活きてるわけで、耳元でレーザーメスの電源ですったもんだやってるのが丸聞こえなのである。あのーもしもし?こんなんやってて麻酔切れちゃったらまたチクッとされんのー?勘弁してよ!結局、犯人は件の白衣の婆さんだったらしい。それを先生が「あなたこないだも同じことやったじゃない」と叱責すると婆さんはゴモゴモ口答えをする。すると先生は私のホクロをレーザーで焼きながら「まったく、ああ言えばこう言う…」と愚痴るんである。愚痴りながら、ホクロをじうじうするんである。
そもそも、あんな婆さん雇ってるなんて、身内かなんかなのかな…えっっ、ひょっとして理事長夫人?と思っていると、あっちから若い看護婦が「先生ー、さっきの患者さんですけど」と呼び掛けてくる。あのー、一応手術中なんですけども!
「ナニ?どの患者さん?」(あーーー肉の焦げるニオイが…きっついなあー)
「陰茎が赤いって来た人です」(なぬぅぅぅ?)
「ナニ?聞こえないもっかい言って」
「陰茎赤い人です」(コレ絶対待ち合いにも筒抜けじゃん)
「陰茎がどうしたの」(じうーじうー)
「病名知りたいそうです」
「さっき言ったでしょ、脂漏性皮膚炎!」(絶対直に聞こえてるって!)

先生はあっちと会話したり、私に「コレ一応病理に回すから」言ったり、ホクロ取ったあとを縫いながら(結局縫うんかい)針の太さと長さのバランスが悪い、発注のしかたが悪いとと婆さんを叱責するなど大忙し。私は、ホクロじうじうされたり、縫われたり、ポチポチにも何度も麻酔されたり、結構過酷な状況にも関わらず、こらえきれなくて笑ってしまった。なんじゃこの病院コントはっ。
というわけで、プライバシーもインフォームドコンセントもへったくれもない、平成になるのを忘れちゃったような病院で、無事ホクロとおさらばすることになったのだった。ホームページによれば、皮膚科の機械は最新式らしい。過程はともかく、結果としては腕はいいみたいだ、ということにしておこう。

コレ『すべらない話』でできるな。
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